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スモールループアンテナ(1) エレメント比較 [アンテナ]

我が家での中短波帯受信環境をさらに改善しようと、いま主力で使っているマグネティックループアンテナについて調べ始めました。すでにいろいろな先人たちが研究しているようで、ありがたいことにその偉大な方たちの書いた様々な文献をネット上で読むことができます。ここ数週間、その文献やWebサイトを読み漁ってみて、ちょっともうお腹いっぱいになってきましたが、このアンテナの性質・特徴みたいなものが、おぼろげながら理解できるようになってきました。
その結果を書くだけでもかなり長くなりそうなので、それはまた別の機会にしておいて、とりあえず2例だけ参考URLリンクを貼っておきます。
Wideband Small Receiving Loop Simplified
WSMLのループ・インダクタンス特性と S/L比。
いろいろ読んできて、「マグネティックループアンテナ」と称するのは少し語弊があることに気付いたので、以後は「スモールループアンテナ」と呼ぶことにします。

今回はループエレメントについていろいろな考察・実験をしてみました。
このアンテナの基本動作は「ループの中を通過する電磁波の磁界成分をピックアップして誘導電流を発生させる」ことです。したがって、受信感度を良くするためには「少ない磁界成分(磁束)でより多くの電流を誘起させる」ようなループが必要となります。そこで、以下の重要な関係式が登場します。
I_LOOP_S_L.jpg
「ループの誘起電流:I はループの面積:S に比例し、また、ループのインダクタンス:L に反比例する」ということになります。
したがって、誘起電流を大きくするためには
(A)「ループ面積を大きくする」もしくは
(B)「ループのインダクタンスを小さくする」ことが求められます。
ただし、この2つは相反する事象なので、(A)(B)を同時に実現するのは単純には難しいことです。面積を大きくしようとすると、ループの長さ(周囲長)も伸びてしまうので、結果的にインダクタンスが増えてしまいます。その辺は、すでに世の中のすごい人たちがあの手この手の絶妙なアイデアで工夫しており、ある一定の対策というか結論が出ているようです。

とりあえず、できる範囲で自分でもいろいろと試してみることにしました。
ここでは、ループエレメントの形状・材質を変えてインピーダンスを測定し、実際の受信も行って比較してみました。

(1) 三角形ループ(ビニール線)
これまで長いこと現役で使ってきたエレメントです。ホームセンターでアース線として売ってるビニール線(VSF 1.25mm^2)を長さ1メートルの塩ビパイプに通して固定したものです。
DSC_0067_.jpg
(2) 三角形ループ(アルミパイプ)
最近製作して別の記事でも登場しているアルミパイプのループです。1メートル長・15ミリ径の中空パイプをステン金具でつないで正三角形にしています。
DSC_0068_.jpg
(3) 正方形ループ(アルミパイプ)
さっきの(2)三角形ループにもう1辺足して正方形にしています。写真は実際の仮設置後のものですが、大地に対して45度傾けてるので、見た目は「ひし形」です。
DSC_0071_.jpg

まずは、それぞれのループ面積を計算しておきます。それぞれ1辺1メートルなので、
正三角形:(1/2)*(底辺)*(高さ)=(1/2)*(1)*(1 *(1/2)*√3)=√3/4=0.433 m^2
正方形:(1辺)*(1辺) = 1.000 m^2
となります。したがって、冒頭の関係式から考えると、面積としては正方形のほうが4/√3 = 2.31倍だけ有利になるはずです。

次に、インピーダンス測定の結果です。
測定器は以前の記事で紹介したインピーダンスアナライザ AA-30.ZEROです。
青線が|Z|:インピーダンス、赤線がR:抵抗成分、緑線がX:リアクタンス成分です。(Z = R + jX、|Z| = √(R^2 + X^2)

(1) 三角形ループ(ビニール線)
ΔLOOP_ビニール線_Z_R_X.JPG
(2) 三角形ループ(アルミパイプ)
ΔLOOP_アルミパイプ_Z_R_X.JPG
(3) 正方形ループ(アルミパイプ)
◇LOOP_アルミパイプ_Z_R_X.JPG
これを見ると、(1)は15MHz付近、(2)は16MHz付近、(3)は13MHz付近で緑色のリアクタンスが大きく変化しています。これが「自己共振周波数」で、この周波数より下では誘導性リアクタンス、上では容量性リアクタンスを示す結果になっています。ということは、磁界成分をピックアップする「マグネティックループ」として動作するのは、実はこの周波数以下だけということになります。自己共振周波数が意外と低いところにあるというのが新しい発見でした。

上の絵だとごちゃごちゃして見にくいので、誘導性リアクタンス(インダクタンス)の部分だけ抜き出し、直列→並列変換したのが下のグラフです。
ループ並列インダクタンス.jpg
これを見ると、インダクタンス値は全帯域で (2) < (1) < (3)の順に小さくなっていることがわかります。グラフにして視覚的にみると一目瞭然ですね。
具体的な数値を書くと、例えば5MHzでは
(1) 三角形ループ (ビニール線):4.52 [μH]
(2) 三角形ループ(アルミパイプ):3.59 [μH]
(3) 正方形ループ(アルミパイプ):5.24 [μH]
となっています。このことから、インダクタンスの観点では
・ビニール線とアルミパイプではアルミパイプのほうが4.52/3.59 = 1.26倍有利
・三角形と正方形では三角形のほうが5.24/3.59 = 1.46倍有利
ということが言えます。

ということは、先ほどの面積の観点との合わせ技で誘起電流の優劣を考えると、三角形ループよりも正方形ループのほうがが2.31/1.46 = 1.58倍だけ有利になりそうです。
最終的に、受信感度は良い順に(3) → (2) → (1)というふうに予想できますね。

では、実際にKiwiSDRにそれぞれのアンテナエレメントをつないで受信した結果を以下に示します。エレメントの交換の都合とかローカルノイズ発生の関係ですべて同じ日にはできなかったのですが、夜間の5MHz帯で信号が出ていない周波数を選んでノイズフロアレベルを測定しました。(NarrowAM 帯域幅5kHz)
アンプはBCL-LOOP13re2.0を使用しています。
(1) 三角形ループ (ビニール線):-110dBm
(2) 三角形ループ(アルミパイプ):-113dBm
(3) 正方形ループ(アルミパイプ):-107dBm

ということで、実際の受信結果は良い順に(2) → (1) → (3)となりました。聴感上の了解度でもはっきり差が出ます。試しに、信号が強い割に変調が浅くて聞き取りにくいAIR Shillong局(4970kHz)を受信してみると、(2)が最も聞き取りやすいです。
ビニール線とアルミパイプの比較では、順当にアルミパイプが良くなりましたが、三角形と正方形の比較では、予想に反して三角形のほうが良い結果となりました。結果だけから言うと、今回は面積の大小よりもインダクタンスの大小のほうが支配的だった、という結論になりそうです。何か計算に入っていない要素があるのかもしれません。
アンテナの世界は理論と実際が合わないことが多いそうなので、一筋縄ではいかないです。
DSC_0069_.jpg
正方形ループにはちょっと期待していましたが、結果はダメでしたね。これで、今のところ三角形ループが最良とわかったので返り咲きとなりました。また別の次の一手を考えることにします。
[今後の予定]
・100円ショップの材料で円形ループエレメントを作る(現在進行中)
・ループエレメントの並列化(構想計画中)
・同軸ケーブルを使ったシールドループエレメント(構想計画中)
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コメント 2

hashimoto

なかなか興味深いプロジェクトですね。
今後の展開に期待します。
特に興味があるのは、同軸ケーブルを使ったシールドループエレメント、未だかつて良い感触の物に巡り会わないんです。
by hashimoto (2018-02-28 11:39) 

ど

ご覧いただきありがとうございます。
シールドループは理屈的に何が良いのか、正直さっぱりわかっていないのです。とりあえず実際に作ってみてその良し悪しを判断したいと思っています。時間が無くてすぐには着手できないのですが、温かく見守っていただければ幸いです。
by (2018-03-01 01:21) 

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